悪役令嬢リセルの恋
 女性への声の掛け方が悪いとひとしきり説教をし、彼らのお礼の言葉に耳を傾ける。
 見た目は怖いけれど、誠実な男たちだった。

「それで、十日後に通りで祭りがあるんです。屋台もたくさん出ますし、夜通し騒いでますから、ぜひ来てください」

 平民が主催の祭り。貴族にとって祭り見物は『はしたないこと』として避ける傾向がある。伯爵夫人も嫌っている。でも実際にはこっそり楽しんでたりするのだ。しかも恋人とのデートなどで。
 ──彼は、どう思うかな……。
 リセルはコホンと喉を鳴らした。

「そうね。それは楽しそうだわ」
「来てもらえれば、うんとサービスしますから、ぜひ、来てください!」

 彼らはペコペコと頭を下げながら去っていくので、リセルは笑顔で手を振った。
 そうすれば、隣から「はぁ……」と息を吐く様子が伝わってきた。

「助けていただいて、ありがとうございました」

 急いでお礼を口にすると、こちらに向き直ったクロードの顔には厳しさがあった。

「危ないところでした。今回はたまたま大丈夫でしたが、毎回こうではありません。ひとりで外出する無防備さを少しは自覚してますか」

 クロードの表情には苦悩がにじみ出ていて、見つめてくる青い瞳と声音には怒りがこもっている。
 リセルはしょぼんとうつむいた。前回のけがといい、彼には迷惑をかけてばかりだ。
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