悪役令嬢リセルの恋
「ごめんなさい。でも私にも事情があって……どうしても内緒でしなくちゃいけないことがあるんです」
「いや、俺は謝ってほしいわけじゃなくて……」

 とたんにおろおろし始めたので、リセルは不思議な気持ちで彼を見上げた。
 怒っているように感じたから謝ったのに違うとは……?
 クロードは片手で目のあたりを隠し、また「はぁ」と息をつく。

「その……祭りに行くなら、あなたは護衛をつけるべきです。夜はさらに危険ですから」
「え?」
「俺が、あなたの護衛をします。つまり一緒に祭りに行くと申し出ているんです。俺じゃいけませんか?」

 少し照れた表情。懇願するような口調になっていて、リセルの胸もしらずに高鳴ってしまう。
 ──これって、ひょっとして……デートの誘い!?
 男性に、しかも好意を持ち始めている人に誘われるのは初めてだ。喜びと戸惑いが同時に襲ってくる。

「あ、あの……よろしくお願いします」
「もちろん、しっかりお守りしますよ」

 クロードが安堵したように微笑むから、頬がかあっと熱くなり、ふいっと目を反らせた。

「ところで、俺は、あなたの秘密の用事には付き合えませんか?」
「ええ、なるべく目立ちたくないので」
「そうですか。無理は言えませんから、今は、諦めます……でも、そのかわり。これくらいは許してください」

 その場で跪き、リセルの手を取ったクロードは指先に唇を落とした。
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