悪役令嬢リセルの恋
 夕闇に染まる通りのあちらこちらに灯が点され、たくさんの出店が出ている。彼らの言葉通り、盛大な祭りだ。
 ──彼はどこにいるのかな。
 町に出るならばおなじみのローブ姿に違いなく、リセルはあたりを慎重に見回した。
 ──あ、あれは。
 人でにぎわうなかに、見知った顔を見つけた。唇のあたりに傷あとの残る、白髪交じりの雄々しい男性だ。

「青狼の団長さま!」

 リセルが声を上げると、気づいた団長はにこっとして敬意を示す。

「ご令嬢、お久しぶりでございます」
「今日は騎士団の制服を着ていないんですね」
「はい、今夜は個人的な理由で来ていますから」

 リセルを見る団長の瞳は穏やかな中にも鋭さがある。さすが帝国一の騎士。非番でも気を抜かないのだ。

「今夜はお祭りですもの。団長さまも楽しんでください」
「ええ。ご令嬢も……では、ごゆっくりお楽しみください」

 話の途中、団長はなにかに気づいた素振りを見せ、すっと頭を下げて去っていく。
 そのあとすぐ、ローブ姿の男性が視界に入り、リセルの胸がトクンと鳴った。
 クロードだ。
 人をかき分けるようにして急ぎ足で近づいてくるその姿に、思わずくすっと笑ってしまう。
 こんな開放的な夜でもフードを被っているのが怪しさ満点で、却って目立つ気がするからだ。
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