悪役令嬢リセルの恋
 これほど人目を忍ぶのはなにか理由があるのだろう。クロードのことをもっと知りたいと思うリセルだけれど、秘密を教えてくれるのか不安になる。

「すみません。待たせましたね」
「ええ、護衛失格……といいたいところですけど、許します。そのかわり、たっぷり楽しませてくださいね」
「もちろんです。はぐれるといけませんから、しっかり俺の腕に捕まって」

 差し出された腕に一瞬躊躇するものの、そっと手を預ける。男性らしい筋肉質な腕は、なにがあっても守られるような安心感があった。
 リセルを助けた際の動きも機敏で、隙がなかったように思う。騎士ではないみたいだけれど、団長に剣術を習っているのかもしれない。

「そちらこそ、離さないでくださいね」
「ええ、決して放しませんよ。そう、決めましたから」
「あら、そんなこと言ってもいいのかしら? 祭りの間は、何度も手を離すことになるわよ。楽しまなくちゃ損だもの」

 胸がときめいているのをごまかすように、悪役らしい笑みを浮かべて憎まれ口をたたいてしまう。
 そんなリセルにもクロードは笑顔を向けてくる。
 ──まぶしすぎる……。

 祭りの出店は、日本で見るものとあまり変わりがない。

「あっ、串焼きがあるわ」
「お、おまえさん方は恋人かい。こりゃぁ美男美女だ。お似合いだねぇ、一本一シルバー。どうだい、サービスするよ!」
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