悪役令嬢リセルの恋
 祭りの雰囲気で浮かれる最中の店主から掛けられる声は万国共通らしい。

「俺が買いますよ」

 ジューシーな肉と野菜の串焼きをほおばる。ときには笑い、ときには驚き、二人は仲良く出店を見て回る。
 二人の間に流れる初々しくもぎこちない空気が薄れていった。その証拠に、クロードの口調が砕けている。

「あ、ダーツ?」
「ふむ。的に当てると景品がもらえるみたいだ。きみはどれが欲しい?」

 クロードがじぃっと的を見ており、リセルは後ろに並ぶ景品を眺めた。ぬいぐるみ、おもちゃ、安価なアクセサリーなど、さまざまに用意されている。

「おっ、フードの兄ちゃん。彼女のためにやるかい? 全部の的のど真ん中に当てたら、特賞の巨大なぬいぐるみが当たるよ! 料金はたったの百シルバーさ」

 店主がどやあな顔で示すのは、真ん中に置かれた巨大なクマのぬいぐるみだ。
 大小ある的は全部で十個あり、一番小さな的は直径三センチほどしかない。その中心といえば、ほんの数ミリ程度だ。しかも寸分の狂いもなく刺さらないといけないらしい。

「ダーツの太さと変わらないじゃない。特賞は無理ね」

 ひとつでも外れれば、残念賞ももらえないという。百シルバーがもったいない。

「……欲しいのは特賞か?」
「えっ、挑戦する気なの?」
「必ず取ってみせるよ。お任せを」

 リセルの返事を待たずして、クロードは代金を支払っている。
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