悪役令嬢リセルの恋
 彼がダーツを構えると、サーッと血の気が引くような雰囲気が漂い、青い瞳がわずかに光ったように見えた。
 スッと投げたダーツは寸分の狂いもなく真ん中に刺さった。

「わあ、すごい!」

 集中した彼の投げるダーツはすべて真ん中を捉え、リセルは泣き顔の店主に特賞のぬいぐるみを手渡されたのだった。
 クマはモフモフして、とてもかわいい。しかしリセルが抱えるには大きすぎてよろけてしまう。その様子を見たクロードの目がきらっと光った。

「邪魔になるから、届けてもらおう。屋敷はどこにある?」
「あ、そうね……」

 屋敷の場所を言ってもいいのか、迷ってしまう。
 クロードに話せば、社交界では悪名高いシルフィード家の令嬢だとばれるのだ。それに、伯爵夫人に見つかれば、咎められるに決まっている。
 浮かれていて、自分の立場をすっかり忘れていた。リセルが悪役令嬢だとわかっても、クロードは変わらずに接してくれるのだろうか。
 ──ううん、そんなはずない……悪役は嫌われる運命だもの。
 好きになればなるほどに、不安にさいなまれる。

「わあ、おおきなぬいぐるみ! お姉ちゃんがとったの? いいなあ!」

 小さな女の子の声だ。キラキラした笑顔でリセルが持つぬいぐるみを見ていた。人懐こい子だ。そのあとから、焦ったような男性の声が追いかけてくる。

「こらシェリー、失礼じゃないか」
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