悪役令嬢リセルの恋
 現れたのは青狼の団長であり、隣にはやさしそうなご夫人を伴っていた。若い女性だけれど夫婦なのだろうか。
 リセルはいいことを思いついた。

「シェリーっていうの? 私はリセルよ。このぬいぐるみが気に入ったなら、シェリーにあげたいのだけど、どうかしら」
「いいの!?」

 こぼれんばかりの瞳がきらめいた。
 ──すごく、かわいい。

「ええ、実は、持って帰れなくて困っていたの。シェリーがもらってくれたら、すごくありがたいわ」

 団長が焦った表情になり「待ちなさい」といい、ぬいぐるみを受け取ろうとするシェリーを引き寄せている。

「それは、そちらの彼がとったものでしょう。大変申し訳ないことですので……」
「いや、ぬいぐるみは彼女のものだから。どうしようと、俺は一向にかまわない。彼女が望むとおりにもらってくれればいい」

 クロードは物に対するこだわりや執着がないようだ。じつにあっさりしている。
 それならばリセルも気兼ねなくプレゼントできる。

「わあ、シェリー。お許しが出たわよ。さあ、どうぞ」
「ありがとう!」

 自分の体よりも大きなぬいぐるみを抱えきれず、団長が慌てて手を添えている。

「ご令嬢、ありがとうございます」

 団長は「さあ行こう。おふたりのお邪魔をしたらいけない」と促し、振り返ったシェリーは笑顔で「バイバイ」と手を振った。
 リセルも手を振り返し、クロードを見上げる。
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