悪役令嬢リセルの恋
「あのご令嬢のことです。きれいではありませんか?」

 頬を染めた令息たちに囲まれているシンデレラを示せば、クロードは一瞥したのみで首を傾げる。

「いや、俺がきれいだと思うご令嬢はリセルだけだよ」

 さらりとのたまってくれる。

「あ……」

 リセルは安堵やうれしさで胸がいっぱいになり、気の利いた言葉を返すこともできない。ただ、彼のきれいな瞳を見つめるだけだ。

「それより、バルコニーに行こうか。ゆっくり話をしたい」

 シンデレラの登場で騒がしくなったホールからバルコニーに移ると、一気に静けさに包まれた。
 月の明かりに照らされた庭園が美しく見える。
 風に吹かれたリセルの髪がふわっとなびき、クロードが一束の髪に指を絡め、そっと唇を落とす。

「リセル、きみは俺の心を捉えて離さない。こんな気持ちになったのは初めてだ」

 そういってクロードはリセルの手をそっと握った。
 リセルの胸がうるさいくらいに高鳴っている。

「私も……初めて会ったときから、セドリックさまに心を奪われています。今日もあなたに会うためだけに来ました」

 リセルの告白に、クロードの表情が嬉しそうな照れ笑いに変わった。

「実は青狼にきみを探させていたんだが……玉座にいる間、きみがほかの令息にダンスを申し込まれやしないかと、ずっと、ひやひやしてたんだ」

 今宵は人が多すぎた。と苦々しさを伴う声音だ。
< 45 / 57 >

この作品をシェア

pagetop