悪役令嬢リセルの恋
「ああ、皇帝はそんな皇后に惚れたんだ。俺も凛としたきみに惚れている……悪意で近づく者を話術で撃退できなければ、帝国の皇太子妃は務まらない」

 親子そろって毒舌を吐く悪女が理想の女性だとは……。
 あまりにも原作のイメージと違い過ぎて、リセルはくすくすと笑ってしまった。

「ごめんなさい。つい……おかしくて」
「いいんだ、きみが笑ってくれるなら俺は道化にもなれる。それでプロポーズの返事は?」

 リセルはクロードの手をそっと包んだ。

「もちろん、承諾いたしますわ。私もセドリックさまの妃になりたいです。皇后さまのように悪意ある相手の涙で川を作れるように努力しますわ」
「ははは……きみなら湖ができるさ」

 クロードがリセルの薬指に嵌めたのはダイヤモンドの指輪だった。

「きみはもう俺の婚約者だ」
「セドリックさま……」
「いけないな。今からは、敬称なしだ」

 月明りを浴びる二人の影が重なり離れることなく長い時を過ごす。

「愛してる、リセル」

 愛情を確かめ合い、キスを交わす二人を祝福するかのように、十二時の鐘が鳴り響いていた。
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