悪役令嬢リセルの恋
 リセルがシルフィード伯爵令嬢だと知ったのは、二人が出会った翌日であったこと。
 町で男たちに襲われた事件(実際はお礼のために話しかけられただけ)のあと、リセルにはひそかに護衛をつけていたこと。
 そしてクロードが忍びで外出するときには、目立たないように町人に扮している護衛たちが複数人いること。
 リセルが驚くようなことばかりを話してくれた。

『リセルをあんな凶暴な姉のいる家に帰したくない』『皇宮に住むべきだ』

 クロードはリセルを家に帰したがらず、ひとしきり困らせたのだった。
 リセルにはまだやるべきことがある。ガラスの靴の行方を見届けるため、シルフィードの家に戻らなければならないのだ。
 なんとかクロードを説得し、彼がやとった侍女と護衛を送ることで話がついたのである。

「お母さま。見て。こんなに私宛の手紙が来てるわ」

 テーブルに置かれた手紙の山を見て、姉が嬉々とした声をだした。
 シルフィード家に届いた手紙はリセルの侍女が仕分けし、姉と夫人の分をテーブルに置いている。リセルが受け取った手紙は姉の倍ほどもあった。
 リセルが皇太子妃になれば、シルフィード家は皇家の外戚となるのだ。貴族たちは親しくしておこうと画策する。

「まあ! お母さま、大公家からの手紙よ!」

 姉が手に持った手紙を握りしめんばかりに興奮している。

「なにが書かれてるんだい?」
「……確認したい旨があるから、シルフィード家に訪問したい。ですって!」
「確認って、なんだろうねぇ?」
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