悪役令嬢リセルの恋
「この家にはもう一人います。その子がその靴を履けるはずです」
「なにを言ってるんだい。娘は二人しかいないよ!」
「いいえ、シルフィード伯爵の嫡子がいます。屋根裏部屋に閉じ込められているから、お連れして」

 リセルが侍女に命じると、まもなくシンデレラが応接間に現れた。
 みすぼらしい灰色の服。けれどとても美しい彼女を見て、護衛騎士の一人がふらふらと前に進み出た。
 その隣にいたフードの騎士がリセルのもとに来て、「リセル」とつぶやき、すっとフードをずらした。
 ──クロード!? 

「どうしてここに来たんですか」

 ひそっと問いかけると彼はふっと微笑む。

「公子がきみに会いに行くというから、一緒に来たんだ」

 公子はリセルに会いに来たのではないと言ってみるけれど、クロードはなかなか納得しない。
 公子がリセルに惚れると困る、という理由でそっと肩を抱いてくる。彼の目にはリセルばかりが映っていた。

「ほら、あちらを見てください」

 なんとか、興味を公子のほうに向ける。今が最高の見どころだから、クロードと一緒に感動したいのだ。

「ああ……やはりあなただ。私を覚えておられますか」

 フードを外したその姿は、まさしく黒髪の公子だった。
 シンデレラは驚いた様子だけれど、はっきりと「はい」とうなずいた。
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