悪役令嬢リセルの恋
「こんなところにあなたを置いておけません。私と一緒に行きませんか。大切にいたします」
「ええ、ぜひ」

 微笑むシンデレラの表情は幸せそうで、まばゆいほどに美しかった。
 ふとシンデレラと目が合い、彼女がにこっとリセルに微笑みかけてきた。

「あなたにお礼を言わなければ。私に軟膏や香油をくれて、お食事のことまできづかってくれて、感謝してるわ。うれしかった」
「え、気づいてたんですか」
「ええ、当然ですわ。この屋敷のなかではリセルしかいませんもの」

 シンデレラはくすくすと笑う。彼女を見くびっていたようだ。

「よかった……」

 リセルの役目が果たせ、安堵したそのとき、がたっと音がした。

「リセル、どういうことだい。おまえは、この母を裏切っていたのかい!」

 憤怒の形相をした夫人がリセルにつかみかかろうとし、フードを外したクロードが立ちはだかった。

「私の婚約者に何をする!」
「皇太子、おまえか。おまえがリセルをそそのかしたんだ!」
「無礼な、黙れ!」

 夫人は騎士たちに腕を押さえられ、「きいいいいぃ」と奇声を上げている。怒りで我を忘れているようだ。

「私の婚約者に手を上げようとするとは、彼女の母親とはいえ許しがたい。アクセル、捕縛し、連行しろ!」
「仰せのままに」

 夫人はアクセルに引きずられていく。

「ごめん、きみの母君なのに」
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