悪役令嬢にならないか?
「ええ、もちろん」
 リスティアが笑顔で応えると、ウォルグも笑顔のまま隣に座った。
「最近、こちらに来ている回数が減っているようだな。エリーサと会っているのかい?」
「はい。エリーサ様のお茶会のほうに、参加させてもらっております。お友達も紹介していただきました。きっと、わたくしのいい取り巻きになってくださると思っています」
 リスティアの話を聞いたウォルグは、形のいい唇の端を持ち上げた。
「エリーサの友達なら間違いないだろう。彼女たちは信頼できる」
 そして取り巻きたちは、ここぞというときに悪役令嬢を裏切るのだ。それが本来の悪役令嬢の役目。だが、本に書かれている悪役令嬢とは、悪役令嬢の逆転劇である。取り巻き立ちは、悪役令嬢の味方となることも多い。
「ところで。ウォルグ様は、わたくしにどのような『悪役令嬢』をお望みですか?」
 ヒロインを破滅に導く悪役令嬢だろうか。それとも、本来の文字通りの悪役令嬢だろうか。もしくは――。
「どのような? それは立派な『悪役令嬢』だよ。では、次の指導にうつろうか」
 彼の瞳は金色に輝いていた。
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