悪役令嬢にならないか?
「そうか。僕も、君の初めてになれて、嬉しいよ」
「ウォルグ様は、お上手ですわね」
 変な女認定されているリスティアを褒めるような人物はいない。それは自覚がある。
「リスティア嬢は、今日も本を読んでいくのかい?」
「はい。今は古代史を読んでおりまして、ちょうどマキノン時代まで読み終えたところなのです」
「へぇ、マキノン時代ね。何か興味のあることがあったのかい?」
 ウォルグの茶色の瞳が、楽しそうに揺らめいた。
「そうですね。マキノン時代は、人の埋葬の仕方に特徴がありますね。大事なものを守るような姿勢で埋葬されるそうです」
 マキノン時代の人々は、死んでからも何か大事なものを守ろうとしているにちがいない。現代の人々も、それには何かしら気がついているはずだ。彼らが守ろうとしていたのはなんなのか。今でもその研究は続けられていると古代史の本には書いてあり、リスティアが興味を示す内容としては充分だった。
 そこからリスティアは饒舌になった。大好きな古代史で気になるものがあったからだ。誰かに相談したいと思っていた。もしかしたら、その相談相手としてウォルグは相応しいのかもしれない。
 だが、しばらくしゃべり続けてから、はっとする。
「申し訳ございません。このようなお話、つまらなかったですよね」
「いや、とても興味深く聞かせてもらった。君は、勉強熱心なんだな。目のつけ所が違う。僕は歴史が苦手なんだけど、君がそうやって教えてくれるなら、興味が持てそうだ」
「それはよかったです。興味を持ってもらえるのが、一番嬉しいです」
 リスティアは微かに笑んだ。
「僕としては、リスティア嬢に興味があるんだけどね」
 ウォルグのそのつぶやきは、リスティアの耳には届かない程、小さなものだった。

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