悪役令嬢にならないか?
物語の中の悪役令嬢には婚約者がつきものだ。そして、断罪も。
だが、今のリスティアには婚約者がいない。それが、物語の中の悪役令嬢を演じるうえでの足りないものであり『悪役令嬢』としては、不要なものでもあった。
「ウォルグ様が側にいてくださったからこそ、わたくしは自分の役目を全うすることができたのです。わたくしにとって、ウォルグ様は特別な方ですから……」
「そういうところが悪女だよ」
ウォルグは誰にも気づかれぬうちに、リスティアの右手をとると、手早くその甲に口づけた。
「僕に対する君の罪はこれで裁かれたことにしておく。僕のためにも、そしてこれからの君のためにも」
それよりも、と彼は言葉を続ける。
「どうか、僕と一曲踊ってはくれないか?」
リスティアは目を大きく見開いたが「喜んで」と彼の手をとった。
『悪役令嬢』としての役目は終えた。だから『婚約者』がいたとしても、彼から断罪をつきつけられることはないだろうし、婚約破棄もされないだろう。
婚約者――それが悪役令嬢には足りないものであり、ウォルグはその座を狙っていたのだ。
だが、今のリスティアには婚約者がいない。それが、物語の中の悪役令嬢を演じるうえでの足りないものであり『悪役令嬢』としては、不要なものでもあった。
「ウォルグ様が側にいてくださったからこそ、わたくしは自分の役目を全うすることができたのです。わたくしにとって、ウォルグ様は特別な方ですから……」
「そういうところが悪女だよ」
ウォルグは誰にも気づかれぬうちに、リスティアの右手をとると、手早くその甲に口づけた。
「僕に対する君の罪はこれで裁かれたことにしておく。僕のためにも、そしてこれからの君のためにも」
それよりも、と彼は言葉を続ける。
「どうか、僕と一曲踊ってはくれないか?」
リスティアは目を大きく見開いたが「喜んで」と彼の手をとった。
『悪役令嬢』としての役目は終えた。だから『婚約者』がいたとしても、彼から断罪をつきつけられることはないだろうし、婚約破棄もされないだろう。
婚約者――それが悪役令嬢には足りないものであり、ウォルグはその座を狙っていたのだ。