悪役令嬢にならないか?
悪役令嬢への気持ち
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 この国の第二王子として生を受けたウォルグ・シュノールは、将来は国王となるだろう兄を支える立場を期待されていた。別に、それに不満があったわけではないし、ウォルグ本人もそれが当たり前だと思っていた。
 そして兄であるアルヴィンは、学園卒業と同時に幼馴染みでもあったエリーサ・スルクと婚約をし、立太子する。
 アルヴィン、ウォルグ、エリーサ。昔から三人一緒でいたのに、自分だけ仲間外れにされたような気がして、心にぽっかりと穴が空いたような気分になった。
 エリーサと共にアルヴィンを支える立場になる。そう思えれば楽だったのに、生涯の伴侶を早々に決めた兄が羨ましいと思いつつ、二人で微笑んでいる姿を目にすると、わけのわからない虚無感に襲われた。
 だからといって、ウォルグはエリーサを好きだったわけではない。彼女の気持ちは昔からアルヴィンに向いていたし、アルヴィンもエリーサの好意を好ましく思っていた。そんな二人を応援したいと思っていたのはウォルグであったはずなのに、実際にそうなってしまうと、虚しい気持ちに襲われるから不思議だった。
 そんなとき、彼女を見かけたのは偶然だった。
 一部からは『変な女』とささやかれているリスティア・ハンメルト。彼女が『変な女』と言われているのは、他人とはつるまず、いつでも本を読んでいるからだ。その姿がウォルグの目には凛々しく映った。自分の世界を持っている彼女に惹かれた。
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