悪役令嬢にならないか?
 ヒロインをいじめているように見えるのは、ヒロインが婚約者のいる男性を取り巻きとして利用していることを咎めたため。ヒロインが仲間外れにされているように見えるのは、それぞれの役割の違いによるもの。そのため、悪役令嬢のせいでヒロインが孤立しているように見えたのだ。
 さらに悪役令嬢は、ヒロインの背中に蟲を入れるという古典的な意地悪をする。だが、これにも理由があり、悪役令嬢が使った蟲は解毒のために毒素を吸い出す蟲なのだ。うっかりと毒を含む花の棘を指に刺してしまったヒロインを、助けようとしたもの。
 その結果、学園の卒業パーティーでは、ヒロインは悪役令嬢による今までの悪行の数々を並べ立てていく。だが、本当の悪役令嬢の姿を知っている者たちは、彼女はそのような悪行をするわけがないと口にし、誰もヒロインの話は信じない。
 悪役令嬢の婚約者であった王太子は、魅了魔法によってヒロインを好きになるようにと洗脳されていたようだが、悪役令嬢の日頃の行いと周囲から突き付けられた現実によって、悪役令嬢の真の魅力を知る。
 ヒロインは王太子を洗脳した罪と、その婚約者である悪役令嬢を陥れた罪で国外追放されるのだが――。
(だけど、ウォルグ様は、わたくしに『悪役令嬢』になれとおっしゃったのよね?)
 悪役令嬢のなんたるかは、なんとなくわかったような気がする。だが、『悪役令嬢』になれと言った意図がわからない。
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