わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

「ケビン、聞いてくれ。オレはケイト嬢に正式に婚約の申し入れをした」
「それでお話があります」
 執務席で書類にペンを走らせていたシュテファンは、朝から機嫌がよかった。今日は、いつもより執務がはかどっているようにも見えた。
「なんだ?」
「殿下の近衛騎士を辞したく……」
 ガタガタと音を立てて、シュテファンは立ち上がった。
「なぜ、だ……? オレに不満があるのか?」
「不満はございません。ですが、ケイトを望むのであれば、私が殿下の側にいることはできないと、そう思ったのです。トレイシー家ばかりが殿下にまとわりつくのを、よしと思わない者もいるでしょう。そうなれば、私は身を引くべきです。あなたがケイトを望むのであれば」
 彼はケイトを見下ろしてくる。ケイトも背が高く見えるようなブーツを履いてはいるが、それでも彼のほうが背は高い。
「ケイト嬢は、婚約を受け入れてくれる、と?」
「それは、私の口から伝えるべき内容ではありません」
 それでもシュテファンは翡翠の瞳で見つめてくる。
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