わけあり男装近衛騎士ですが、どうやら腹黒王太子の初恋を奪ってしまったようです~悪役令嬢回避のつもりが、いつの間にか外堀を埋められていた件について~
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 後日、シュテファンの近衛騎士であるケビン・トレイシーは騎士団を退団した。それは、妹であるケイト・トレイシーが、シュテファンとの婚約を決めたからとも言われているが、一部ではトレイシー侯爵が自分の跡を継いでもらいたいと、以前から強く口にしていたためとも言われている。
「シュテファン殿下」
 シュテファンは、婚約者となったケイトの屋敷を訪れていた。
 花が彩る庭園にある東屋(ガゼボ)でお茶を嗜んでいると、柔らかな風が頬を撫でていく。
 ケイトは、シュテファンに見せたいものがあると言って、一度屋敷に戻っていった。
 一人残された彼に声をかけたのは、ケイトとケビンの母親であるキャロリンだ。キャロリンは、ケイトとよく似ている。親子なのだから当たり前だろう。
「ケイトのことを、どうかよろしく頼みます」
 キャロリンは、深く頭を下げた。
「オレのほうこそ。協力をしてもらった礼を言いたい」
「協力だなんて……。ケビンも喜んでおりますのよ。ケイトが殿下と婚約して」
 ふふふと艶やかに笑う姿は、刻んだ年齢を感じさせない。
「従騎士の任命式で、ケイトを一目見て驚いた。なぜ、彼女がそこにいるのかわからなかった。本来であれば、あそこにいるのはケビンだったはずだ。なぜならケビンは、あのときにはすでに病気は完治していて、従騎士として申し分ない能力を発揮するはずだった」
< 22 / 26 >

この作品をシェア

pagetop