悪役を買って出た令嬢の、賑やかで切なくて運命的な長い夜のお話
「……それで、エバ様はここで何をしているんです?」
エバは大きく繁った薔薇の木の側に身を隠すように座り込み、花や枝の隙間からその先にあるガゼボの中に佇む二人の人影を見ていた。
普段連れている侍女も居ない。
爽やかな風が花を揺らす庭園で、薔薇の木に身を隠しこそこそしている。
完全に怪しい不審人物に間違いないが、自分の行先どこにでも現れる、神出鬼没なアンドレアには言われたくない。
そう思いながらも、王室騎士団に所属するアンドレアに誤魔化す為に嘘をつくのも躊躇われる。
それに、どうせ分かっているのに……と思いながらエバは口を開いた。
「……王子とカトリーナ様が会っているのですが……駆け落ちの相談をしているらしくて……」
「駆け落ち?」
「しーっ! しーです!」
この時間、庭園には人が入り込まないのは確認済だ。
だから、王子とカトリーナが二人きりで会うならここしかないと確信していた。
王子の親友、エバだから分かっていたのだ。
エバは大きく繁った薔薇の木の側に身を隠すように座り込み、花や枝の隙間からその先にあるガゼボの中に佇む二人の人影を見ていた。
普段連れている侍女も居ない。
爽やかな風が花を揺らす庭園で、薔薇の木に身を隠しこそこそしている。
完全に怪しい不審人物に間違いないが、自分の行先どこにでも現れる、神出鬼没なアンドレアには言われたくない。
そう思いながらも、王室騎士団に所属するアンドレアに誤魔化す為に嘘をつくのも躊躇われる。
それに、どうせ分かっているのに……と思いながらエバは口を開いた。
「……王子とカトリーナ様が会っているのですが……駆け落ちの相談をしているらしくて……」
「駆け落ち?」
「しーっ! しーです!」
この時間、庭園には人が入り込まないのは確認済だ。
だから、王子とカトリーナが二人きりで会うならここしかないと確信していた。
王子の親友、エバだから分かっていたのだ。