【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
 その時、背後から「ビクトリア!お前なんてことを――!」という父の怒鳴り声が飛んできた。
 
 あぁ、顔を見なくても分かる。相当ご立腹だ。
 
 きっと、かなり叱責されるに違いない。

 私は何も悪いことをしていないのに。

 頑張ってるのに、どうして報われないんだろう。


 あぁ、こんな人生、いやだなぁ――。


 そう思った瞬間、ガンと殴られたように頭が激しく痛んだ。

 平衡感覚が狂い、立っていられずふらりと倒れ込む。

 
 走り寄ってくる父の姿を最後に、私は目を閉じた。


 まぶたの裏に、見たことない光景が走馬灯のように駆け巡る。

 
 川の水が(せき)を切ってあふれ出すように、記憶の波が頭の中に流れ込んでくる。


「これ……なに……?」
 
 
 呟きとほぼ同時に、私は徐々に意識が薄れていった。



◇◇ 

 
 照明器具の明かりが、眩しいくらいに私に降り注ぐ。
 
「カット! ハイ、OK!」

「お疲れ様です。麗華さんは、このシーンをもちましてクランクアップとなります! おつかれさまでしたー!」

 花束を手渡され、拍手で見送られながら楽屋へ戻る。

 ドラマ撮影の真っ最中ということで、スタジオ内は演者やスタッフなど、人でごった返していた。
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