【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
 夢の中の私は、女優だった。
 
 デビューはたしか三歳の頃。
 キッズ用品のCMに起用されたのがきっかけだ。

 ステージママの母親に言われるがまま、私は芸能活動に人生のすべてを費やした。

 仕事を理由に学校は行かず、恋人はおろか友達も殆どいない。

 周りの子が当たり前に経験する恋や青春を、私は何も知らなかった。

 だからだろうか。ドラマで学生役を演じると、監督に『なんだか、嘘っぽいなぁ〜』と言われることが多くなった。

 SNSで自分の名前を検索すれば、スマホの画面に映るのは『演技下手』『オワコン』の文字ばかり。

 学生らしい自然な演技、瑞々しい青春の雰囲気をかもし出せない私に、事務所はプロデュースの方向性を決めかねていた。

 
 そんな時、事務所の社長がこう言った。
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