私、修道女になりたいのですが。。。 ー 悪役令嬢のささやかな野望?
私にそう忠告する声はどこか冷たい。
 婚約者にしては塩対応のように思えるけど、政略結婚の相手なのだから、これが普通なのかもしれない。
 ニコリとも笑わず、アレックス様は馬を走らせこの場を去っていく。
 アニメのアレックス様はいつも笑顔でとても優しい方だったのに、この世界の彼はなんというかクール。
 その後ろ姿を呆然と見送っていると、グレースに泣きつかれた。
「マリア様、もう無茶はしないでください」
「胆を冷やしましたよ。乗馬はしばらくおやめください」
 キースも額の汗を拭いながら、ハーッと息をつく。
「心配かけてごめんなさい。まさかアレックス様が助けてくれるなんて思わなかった」
 ゆっくりと立ち上がると、私の服についた土をグレースが払う。
「どこかへの視察の帰りに立ち寄られたのかもしれませんよ」
 忙しいのに来てくれたのか。
 でも、彼に圧倒されて、婚約破棄の話を切り出せなかったな。なんとしても話をしなきゃ。
 このままじっと死を待つなんて嫌だ――。

 次の日は久しぶりに貴族の子弟子女が通う王立学園に行って、皇太子を正面玄関前で待ち構えていた。
 そんな私をみんな訝しげに見ている。
 やはり私が悪役令嬢で嫌われているから?
 みんなの視線に耐えられないんですけど。
 ああ~、アレックス様、早く来てください。
 何度も心の中でそう祈っていたら、ざわめきが起こった。
 何事かと思えば、アレックス様が友人のルーカス公爵令息を伴ってやってくる。
 ルーカスさまはサマーセット公爵の嫡男で、お父上は宰相をしている。彼も頭脳明晰で将来の宰相候補だ。
 数十メートル先にいてもふたりのオーラが凄くて後光が差しているように見えた。
 その周辺にはふたりに憧れている令嬢たちの姿があって、まるでアイドルの出待ちのよう。
 すごいと思って見ていたのだけれど、自分のミッションを思い出してハッとする。
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