殿下は殿下の心のままになさってください。
「不快な思いをさせてすまなかった」


 道すがら、ヴァージル殿下がそっと囁く。何故だろう。以前の形ばかりの謝罪とは大分違って聞こえる。


「不快って、カトレアのことですか? 別に、なんとも思っていませんけど」


 ただうるさいなぁってだけ。価値観や考え方が相容れないのは元々だし。


「君が気にせずとも、僕が気になるんだ。彼女は元々他人との距離感が近いうえ、誰かに助けてもらえることが当たり前になっている。だから、僕にあんな頼み事をしてきたのも、特別ななにかがあるからってわけではないんだ」

「は、はぁ……」


 正直どうでも良い――――といえばどうでも良いのだけど、とてもそんなことを言えるような雰囲気ではない。

 と、そのとき、一体何を思ったのか、ヴァージル殿下が手を握ってきた。心臓のあたりがブワリとざわめき、喉のあたりになにかがつかえる。


「殿下……?」


 尋ねるわたしに向かって、殿下が微笑む。少し日焼けした肌、以前よりも凛とした顔立ち。数ヶ月前とは別人みたいに見える。


「好きなようにしてもいい、だろう?」

「え、ええ……」


 うなずきつつ、顔を背ける。何故だろう? 顔がめちゃくちゃ熱かった。


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