□TRIFLE□編集者は恋をする□
トレーシングペーパーを通って拡散された光が、丁寧に磨き上げられた金具を上品に光らせる。
でも柔らかな光で革の質感が消えてしまう事なく、黒いレフ板が影を締めて立体感が出てる。
手馴染のよさそうな上質な革の素材感が、写真でもちゃんと表現されていた。
カメラも構図も変えずに、セッティングだけでこんなに差が出るなんて。
「こんな感じでどうだ?」
ディスプレイの写真を確認しに来た片桐が私を見下ろす。
「ありがとう。すごくいい。……でも、すごく悔しい」
「悔しいってなんだよ」
「だって、私があんなに長時間頑張っても、ちっともまともな写真撮れなかったのに、片桐はあっという間にこんな写真撮っちゃうんだもん。私センス無いんだなぁ」
はぁー。とため息を吐きながら言うと、大きな手でこつんと後頭部を叩かれた。
「バーカ。こんなの経験と知識の差だ。悔しいなら勉強しろ。俺でよければ教えてやるから」
「え、本当に?」
「あぁ。お前なら飲み込み早いから、教えがいありそうだし」
そう言って笑った片桐に、思わず身を乗り出した。
「じゃあさ、もうすくクリスマスケーキの撮影あるでしょ?ああいうケーキ撮るコツある?私淡い色のスイーツ撮るの苦手なんだよね」
「あぁ。白いクリームのケーキは濃い影を落としたくないから、全体に光が回るように天井とか……」
「待って、待って!ちょっとメモとるから待って!」
「ほんとお前は仕事になると目の色変わるよなぁ」
慌てて自分のバッグを漁りだした私に、片桐は呆れたように笑った。