□TRIFLE□編集者は恋をする□
「信じてないけど。私たちには出してくれないのに、片桐には勧めるなんてズルいよ」
「だってここ私の店だもん。私の好きにして何が悪いのさ」
とても客への対応だとは思えない、偉そうな態度のおばちゃんに私はがっくりと肩を落とした。
「んもー、おばちゃん自由すぎる」
そんな私とおばちゃんのやりとりを、片桐は頬杖をつきながら呆れたようにながめていた。
あぁ。こんな言い争いをしてて、きっとバカなヤツだと思われてるんだろうな。
そう思って少し恥ずかしくなる。
今まで何年も一緒に仕事をしてきて、徹夜明けのすっぴんを見られても平気だったのに。
今はこうやって食べている姿を見られているだけでもなんだか緊張する。
そんなの私の自意識過剰で、片桐は何も思ってないんだろうけど。
「はい、鍋焼きうどん」
大きな土鍋が片桐の前にどん、と置かれた。
白い湯気のたつうどんの上には、大きな海老の天ぷらが二つ、綺麗な弧を描き行儀よく並んでいた。
「うわぁ……。美味しそう」
思わず目が奪われる。