□TRIFLE□編集者は恋をする□
三浦くんの運転する車はとてもスムーズで快適だった。
「高速を降りてすぐのホテルですよね?」
「うん、そう」
助手席から運転する彼の横顔をぼんやりと見ながら、心地よい車の振動に身をまかせていると、
「明日土曜だし、今日はそのままホテルに泊まりましょうか」
なんてさらっとバカな事を言いだす。
「またそういう冗談を言う」
「冗談じゃないですよ。いつも本気なのになぁ」
「ねぇ、三浦くんってそうやって今まで何人の女の子を口説いてきたの?」
「うーん。数えきれないから、2回以上エッチした女の子の数でもいいですか」
「うわ、最低!」
爽やかな顔して平気で最低な事を言うんだから。
思いっきりひく私を見て、三浦くんの表情から笑顔が消えた。
今までの冗談のトーンとは違う、落ち着いた声でぽつりと言った。
「でも俺は、彼女がいるのに他の女の子に手を出したりしませんよ」
そう言われると、もう何も言えなくなる。
ずきりと胸が痛んで、だまって自分のひざに視線を落とした。
「片桐さんと話したんですか?」
「話はしてるよ、普通に」
「仕事の話じゃなくてですよ」
もういちど黙り込む私を見て、三浦くんは大きなため息をついた。
「本当に平井さんは、仕事以外の事は不器用なんだから」