□TRIFLE□編集者は恋をする□
「はい。これで涙を拭いてください」
差し出されたのは社用車の中に転がっていた箱ティッシュ。
私は無言で受け取って、思いきり鼻をかんだ。
「ごめん。私ちょっと情緒不安定かも」
「そんなのいつもじゃないですか」
「やっぱり三浦くん、むかつく」
「……泣くほど片桐さんの事が好きなんですね」
そんな事ないと反論したかったけど、そんな強がりを言っても余計に痛々しいだけだから、黙って下を向いた。
確かに、こんな嫌味ひとつで涙が溢れてしまうほど、私は片桐に惚れてるんだ。
「とりあえず高速降りたら、テキトーなホテルに入っていいですか?」
黙り込んだ私に、三浦くんは明るくそう言う。
「え?」
ホテルに入るって、どうして?
高速道路の札幌南という標識を見ながら運転する三浦くんに、意味が分からず眉をひそめた。