□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

「お見舞いに色気なんて必要ないでしょ。私はおばちゃん病室で暇してるだろうなと思って……!」

「あんたたちって、仲のいい姉弟みたいだね」

言い合いをする私たちを見ていたおばちゃんが呆れたように言った。

「ちぇー。姉弟かぁ。恋人同士がいいのになぁ」

「何言ってるの」

いじける三浦くんの姿は、確かに歳の離れた弟みたいだ。
私は一人っ子だけど、こんな弟がいたら楽しいんだろうな。

「ほら弟くん。おこずかいをあげるから、一階の自動販売機でジュース買ってきて」

言いながらお財布を開く。

「ジュース代くらい俺が出しますよ。おばちゃん何がいい?」

三浦くんが財布を持った私の手の上を優しく下ろさせながらおばちゃんにたずねる。

「じゃあお茶をお願い」

「了解です。平井さんはいつものコーヒーでいいですよね?」

「あ。うん」

「じゃ、行ってきまーす」

笑顔で廊下に出ていく三浦くんの後姿を見ながら、「あの子もいい子だよねぇ」とおばちゃんがつぶやいた。

「うん。いい子だよ」

気が利くし、仕事もできるし、明るいし。
ただちょっと悪ふざけがすぎる時があるけど。

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