□TRIFLE□編集者は恋をする□
「だって、これは……」
デガワと葉月さんが……と言い訳しようとして、自分が情けなくなってくる。
確かにこの服にした方がいいと言ったのは二人だけど、結局着たのは自分自身だ。
それに酔っていたとはいえ岩本さんがああやって触ってきたのは、私が上手く彼をかわせなかったからだ。
きっといつも凛としている葉月さんだったら、同じ格好をしていてもこんな事にはならなかっただろう。
きっと合コン慣れしてるデガワだったら、ベタベタ触られたって、相手を怒らせることなくうまく断っていただろう。
こんなの、片桐に呆れられてもしょうがない。
自分の不器用さが悔しくて、思わず小さく鼻をすすった。
「何もされなかったか?」
助手席で下を向いて黙り込む私に向かって、細く開いた窓の隙間から煙草の煙を吐き出しながら片桐がたずねる。
その声の優しい響きに驚いて顔を上げると、片桐の大きな左手が私の頬にかかるゆっくりとかきあげた。
「大丈夫だったか?」
まっすぐに私を見る真剣なその瞳に、思わず弱音が零れた。