□TRIFLE□編集者は恋をする□
「だって、片桐が平井に手を出すのって、平井が他の男と一緒に見た時じゃない?」
「え……?」
「普段は添い寝してもキスひとつしないくらい余裕あるくせに、平井が他の男に口説かれてるのを見ると、途端に余裕がなくなるんだから」
爆笑して疲れたのか葉月さんは大きな息を吐き出すと、黒い綺麗な髪をかきあげて私の方を見た。
「片桐はよっぽどあんたの事を、他の男に取られたくないのね」
「そんな……」
私の事を他の男に取られたくないなんて。
葉月さんの言葉に声が震えた。
「そんなの、勝手すぎる……。自分は彼女いるくせに……」
私を自分のものにしてくれないくせに、他の男に取られるのはイヤなんて、勝手すぎる。
そう思うのに、心のどこかで嬉しいと感じてしまう。
私はなんてバカな女なんだろう。
「まぁ、恋愛感情なんて身勝手なもんでしょう。その想いが強ければ強い程」
葉月さんの言葉が胸に突き刺さる。
確かにそうだ。
私の片桐への恋愛感情も、酷く自分勝手で我が儘だ。
美咲さんという彼女がいるって知っていても、片桐に抱いて欲しいと何回も思ってた。
あの大きな手に触れて、あの唇にキスをしてもらいたいと、いつもいつも思ってた。