□TRIFLE□編集者は恋をする□
「でも……。昨日私フラれちゃいましたよ」
「え?片桐に告白したの?」
「告白っていうか、『美咲さんがいるのにずるい』って責めたら、ただ『悪い』って謝られちゃって」
葉月さんが黒縁の眼鏡の奥の瞳を細め、静かに微笑んだ。
「ああ見えて、片桐も不器用で余裕がないのよ」
「片桐が……?」
「自分には彼女がいるのに、平井は大切な同僚なのに、自分の行動であんたが悩んで苦しんでるのも知ってるのに。それでもあんたが他の男に口説かれてるのを見てると、自分だけのものにしたくて理性が飛んじゃうなんて、ほんっと不器用な男よね」
そう言ってる最中でまた笑いがこみ上げてきたのか、葉月さんは肩を震わせて笑いだす。
「もう!葉月さん笑わないでください。どうせ動揺する私を見て面白がってるんでしょ!」
「違う、違う。面白がってないってば。片桐には片桐で、なにか事情があるのよ。きっと」