□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

美咲さんは、どうして美容師を辞めたんだろう。
片桐の暴力でケガをしたなんて、やっぱり信じられない。

そう思ったけれど、そんな事本人に直接聞けなくて、私は黙ってシャッターを切った。

「ねぇ、あんたっていつもこんな時間まで仕事してるの?」

真剣な顔で付箋を貼り比べながら、美咲さんが私にたずねた。

「いつもってわけじゃないですよ。校了前とか今回みたいに急にページ作り直したりする時は会社に泊まり込むのも珍しくないですけど」

「プライベートな時間とかなくない?」

「まぁ、平均的な同世代の女の子に比べれば、少ないかもしれませんね」

カメラから顔を上げパソコンで画像を確認すると、美咲さんは何も言わなくてもさっと次の商品の用意をしてくれる。
「ありがとうございます」とお礼を言いながらカメラを構え直した私に、美咲さんはぽつりと言った。

「匠も、こんなに忙しく仕事してるの?」

「片桐は……」

美咲さんから出た片桐の話題に思わず一瞬カメラを持つ手が止まったけれど、平静を装ってシャッターを切る。

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