□TRIFLE□編集者は恋をする□
ちっと舌打ちをしながら私を横目で睨むと、今度はさっきよりもゆっくりとハサミを動かす。
「ハサミの切れ味が悪いから、髪が刃にひっかかって痛い時があるかもしれないです。なるべくゆっくり切りますけど、それでも痛かったら遠慮しないで言ってください」
「うん、大丈夫よ」
しゃきり、しゃきりと音を響かせながら、優しく話しかける美咲さんに、おばちゃんは嬉しそうに答えた。
「こんな事になるなら、自分のハサミ持ってくればよかった」
「美咲さん、ちゃんとハサミ持ってるんですね」
「当たり前でしょ」
「美容師辞めたから処分したのかと思って」
「プロのハサミがいくらすると思ってるのよ。簡単に処分するわけないでしょ」
「やっぱり高いんですね」
「もう一年半くらい研いでないけど、それでもこんな工作用みたいなハサミよりずっと切れ味いいわよ」
話しながら手際よくハサミを動かす美咲さんは、ウエディングドレスを着て微笑んでいる時よりもずっと生き生きとして綺麗に見えた。