□TRIFLE□編集者は恋をする□

 




新しい髪形がよっぽど気に入ったのか、おばちゃんは車いすを軽やかに操作して、『みんなに髪形を披露してくる』と、嬉しそうに去って行った。

私は髪を切るのに使った談話室を片づけながら、美咲さんに話しかけた。

「あの、美咲さん、美容師やめた理由って……」

「あ?」

思いっきり不機嫌そうにこちらを見る美咲さんに思わず言葉に詰まったけれど、でも本当の理由が聞きたくて、負けずに話を続ける。

「三浦くんから辞めたんじゃなくて店をクビになったって聞いたんですけど、本当なんですか?」

「どうせもっと詳しい理由聞いたんでしょ?なんて言ってた?」

「……美咲さんが、お店のお客さんに手をだしてクビになったって」

何バカな事を言ってんの。そんなワケないでしょ?
匠と付き合ってるのに、客になんて手を出すわけないじゃん。

なんて、きつい言葉が返って来ると思っていたのに、
美咲さんは「本当だよ」とぽつりと言った。

< 288 / 396 >

この作品をシェア

pagetop