□TRIFLE□編集者は恋をする□
「でも、お客さんに手を出すなんて……」
「前いた店厳しくて、客とプライベートで会ったりするとすぐペナルティだったんだよね。番号交換するだけでも怒られるし。一応ばれないように気を付けてたんだけど、仕事終わりに待ち合わせしてるところをお店のオーナーに見つかっちゃって。怒られるの面倒だから、美容師やめちゃった。この仕事別に好きじゃなかったし」
髪の毛を気怠そうにかきあげながら、美咲さんはそう説明する。
「片桐と付き合ってるのにどうしてそんな」
「匠の事が好きだったからよ」
「え?」
どうして片桐が好きだから、お店のお客さんに手を出すことになるわけ?
「あんたみたいに、いつもまっすぐで夢中になれる仕事がある人にはわかんないわよ」
恋愛と仕事は関係ないと思うんだけど、そういうふうに突き放されると、それ以上何も言えなくなる。
「……美咲さんって片桐の言っていた通りの人ですね」
手渡されたハサミをケースにしまいながらポツリと言うと、美咲さんに睨まれた。
「どういう意味よ」
「片桐に前、彼女ってどういう人?って聞いたら、ネガティブで面倒な美人って言ってたから」
「なにそれ、むかつく」
「でもその通りですよ」