□TRIFLE□編集者は恋をする□
「じゃ片桐さん。あとはお願いしまーす」
私の腕を掴んでいた新田さんがそう言った途端、周りにいたメイクさんも、チャペルで準備をしていた男性スタッフも、ホテルの関係者まで、一斉に出口へと向かって歩き出す。
「え、ちょっと……!?」
どうしてみんな出ていっちゃうの?
チャペルを出ていくスタッフの姿をおろおろと見送っていると、コツンと靴音がした。
慌てて振り返る。
片桐がゆっくりとこっちに近づいてくる。
「片桐、これはどういうこと?」
自分だけ本当に何も聞かされていなかったのが悔しくて、片桐を睨んだ。
「新田さんからウエディング本の表紙の写真を撮ってくれって頼まれた時、二つ条件を出したんだ」
片桐は苦笑いしながら私に左手を差し出した。
「条件?」
まるでお姫様を迎えに来た王子のように、私の前に差し出された大きな手。
その手を取っていいのか判断できず、棒立ちのまま片桐を睨む。
「一つはプロのモデルじゃなくて平井なら撮ってもいいって事。もう一つは二人きりで撮影させてもらうって事」
「なんでそんな事……、嫌がらせ?」
「どうして?」
「だって。自分が振った女のウエディングドレス姿を撮影するなんて、悪趣味にもほどがあるでしょ」
「振った?俺がお前を?」
私の言葉に片桐が小さく眉を上げる。