□TRIFLE□編集者は恋をする□
あんなに振り回しておいて、片桐は私を振った自覚はないんだ。
怒りと不満を込めて睨むと、彼は小さく笑った。
「せっかく綺麗なのに、そんな顔するなよ」
片桐の右手が伸びてきてそっと私の頬に触れる。
輪郭をなぞるように顎まで降りてきた指が、微かに私の唇に触れた。
ただ見つめ合って唇に触れられただけなのに、まるではじめてキスをした時みたいに緊張で胸が息苦しくなる。
「すごく、綺麗だ」
優しい表情で言いながら、まるで宝物にでも触れるかのように、ゆっくりと私の髪を撫でる。
ずるい。
そんな風にされたら、怒りも不満もどこかに飛んで行ってしまう。
片桐への愛しさだけで、体中が満たされてしまう。
片桐は一度は下げた左手を、もう一度私の前に差し出す。
素直にその手を取るのはしゃくだから、片桐の事を睨みながら渋々という仕草でその大きな手のひらに自分の右手を重ねた。