□TRIFLE□編集者は恋をする□
 
「あっつい……」

平井は独り言のようにつぶやいて、ビヤガーデンの会場で無料で配っていたうちわを手にぱたぱたと仰ぐ。

「いいなぁ、うちわ」

その様子を見ていた大下の言葉に、平井は笑いながらどうぞと持っていたうちわを差し出した。

「もう夜なのに暑いですね」

「札幌の風はお盆を過ぎれば大分涼しくなりますから、この暑さもあと少しですよ」

「でも酔っぱらって汗ばんだ平井さんも、色っぽいなぁ」

「私は酔っぱらって絡んでくる大下さんに困ってますけどね」

苦笑しながら平井が夜空を仰ぐと、隣を歩く大下が「あっ」と声をあげた。

「平井さん、虫にさされてますよ」

「え?」

「ここ、赤くなってる」

白いうなじについた赤いあとを、大下が指さす。

< 382 / 396 >

この作品をシェア

pagetop