□TRIFLE□編集者は恋をする□
「あっつい……」
平井は独り言のようにつぶやいて、ビヤガーデンの会場で無料で配っていたうちわを手にぱたぱたと仰ぐ。
「いいなぁ、うちわ」
その様子を見ていた大下の言葉に、平井は笑いながらどうぞと持っていたうちわを差し出した。
「もう夜なのに暑いですね」
「札幌の風はお盆を過ぎれば大分涼しくなりますから、この暑さもあと少しですよ」
「でも酔っぱらって汗ばんだ平井さんも、色っぽいなぁ」
「私は酔っぱらって絡んでくる大下さんに困ってますけどね」
苦笑しながら平井が夜空を仰ぐと、隣を歩く大下が「あっ」と声をあげた。
「平井さん、虫にさされてますよ」
「え?」
「ここ、赤くなってる」
白いうなじについた赤いあとを、大下が指さす。