□TRIFLE□編集者は恋をする□
 
何も知らない平井に、ウエディングドレスを着せて撮影したこと。
いくら仕事を兼ねているとはいえ、なんの覚悟もなく好きな女にウエディングドレスを着せるわけがない。

それなのに、この鈍感女は人の覚悟に気づきもしないで、見当違いなことを悩んでうじうじしていたのか。

「え、嘘……。だって、プロポーズなんて、付き合ってもいなかったのに」

「まぁ、そうだけど」

呆然とする平井を見ながら、ふーっと煙草の白い煙を吐き出す。

「もう何年も一緒に仕事をして、いい所も悪い所も、スッピンも泣き顔も情けない所も全部見て、それでお前に惚れたんだ。全てをさらけ出して、それでも好きになれる相手なんてお前以外いないと思ってるけど」

俺がそう言うと、平井の瞳がじわりと潤んだ。

「お前は違うのか?」

「ち、違わない……!」

両手で顔を覆って、首を左右に振りながら、平井は口を開く。
その声は、涙声だった。

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