エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 怪訝に思う私の耳に、やがて涼帆がクスクス笑う声が聞こえた。

『あはは、めっちゃ否定するじゃん亜椰。それが答えだって自分でわからないの?』
「えっ? 答えって?」
『自分の心が求めてるの相手は社長だってこと。突然のプロポーズで混乱するのも、胡桃ちゃんのことを第一に考えて気持ちセーブするのもしょうがないけどさ。もう少し、素直になりなよ』
「そ、そう言われても……」

 フィンランドで彼とすれ違ってしまって以来、素直になることにはかなり臆病になっている。

 また傷ついたら、今度こそ立ち直れないような気もする。

『とにかく、極力バリアーを張り巡らせるのはやめて、社長と一度ゆっくり話してみなよ。胡桃ちゃんのことも含めてさ』
「うん……そうする」

 諭すような涼帆の声に、こくんと頷く。

 この間瑛貴さんと再会したとき、私の心は完全にバリアーだらけだった。いきなり全部取り払うのは難しいけれど、私なりに歩み寄ってみようかな。

 涼帆と話していたらなんとなく心の整理がついた気がする。

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