エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「ありがとう。ちょっと落ち着いた」
『ならよかった。こう見えて責任感じてるんだから、私がフィンランド旅行に付き合わなかったせいで、亜椰がつらい思いをしたのかなって……』

 涼帆の声のトーンが急に沈んだ。初めて聞かされる胸の内だった。

「それは関係ないよ。全部私が決めたことだし、つらい思いをした代わりに胡桃に出会えたんだもん。むしろ、お礼言わなきゃ」
『亜椰がママで、胡桃ちゃんは幸せだね』
「えっ、そうかな……?」

 いきなり褒められたので照れてしまう。胡桃のママとして胸を張れるよう努力をしているものの、結果が伴っているかどうかは自分ではわからないから。

 でも、涼帆の言う通りだったらいいなとは思う。

『そうだよ。胡桃ちゃんのためにも、社長との話し合い頑張ってね』
「わかった。頑張ってくるよ。涼帆も旦那さんと仲良くね」
『はーい。またね』

 通話を終えて、ふうっと息をつく。まだなにも答えは出ていないけれど、涼帆のお陰で不安が少し和らいだ。

 長く外にいたおかげで火照っていた頬の熱もだいぶ治まり、ようやく私は家の中へと戻った。

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