エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「どう? 少しはドキドキしない?」
しばらく走ったところで、無言だった麻人さんがチラッと私を見て言った。
早く目的地に着かないかとそればかり考えていたので、なにを聞かれたのかとっさにわからず「えっ?」と首を傾げる。
「聞き返されると気まずいな。まぁいいや、今の質問ナシ」
「す、すみません……」
「謝らなくていいって。俺が努力不足なだけ」
麻人さんは残念そうに笑って、曲がり角でハンドルを切る。
その後も静岡駅に着くまでのおよそ三十分、微妙に気まずい雰囲気が続き、やっぱり電車にした方がよかったかなと繰り返し自問していた。
ロータリーで車から降ろしてもらい、手を振る麻人さんにお辞儀をして走り去る軽トラックを見送ると、急いでバッグからスマホを取り出す。
駅周辺の道が少し混雑していたので、約束の時間を二分ほど過ぎてしまった。
待ち合わせ場所はお互い駅としか認識していないので、とりあえず駅舎に向かって歩きながら瑛貴さんに電話をかける。
『はい』
「すみません、今到着しました」
『知ってる』
「知ってる……?」