エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「きみは俺の母親ではないし、ぶつけられたセリフも置かれた状況も違う。なのに『再会なんてしなければよかった』と言われた瞬間、幼い頃の記憶がフラッシュバックしてしまったんだ。それで、きみとの間に突然高い壁ができてしまたような気がして……追いかけたいのに、体が動かなかった」

 伏し目がちに語った彼は、まるでその時の体のこわばりを思い出したかのように、自分の二の腕を掴んでほぐすようにさすった。

「日本に戻ってからもキッチンだけを押しつけるように送って、なかなか会いに行こうと決断できなかったのも同じ理由だ。その間にきみは引っ越して、電話番号も変えてしまったようだな。ようやく捜そうと決めた時には、きみに繋がる手がかりを失っていた」
「ごめんなさい、私……」

 彼の抱えていた事情を知らなかったとはいえ、瑛貴さんをきっと深く傷つけた。今さら後悔しても遅いけれど、私は自分のことしか考えていなかったのだ。

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