エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「亜椰が謝る必要はない。むしろ、きみの存在があったからこそ、俺は完全に心を閉ざすことなく大人になれた。あの夜に言っただろ? 俺はきみとのままごとで救われていたんだって」
「……そういえば」
思い起こされるのは、フィンランドで彼とディナーと楽しんでいた時のこと。
瑛貴さんは初恋の相手が私だと明かすとともに、どうして私に惹かれたのかを語ってくれた。
『俺は当時、子どもながらに家族ってものに絶望してたんだ。だからかもしれないが、強引に誘われたきみとのままごとに、心が救われた。人形の赤ちゃんにすら愛情深く接するきみが眩しくて、今だから言うけど、涙が出そうだった』
あの時、どうして彼が家族に絶望していたのか詳しくは聞けなかったけれど、お母さんとの複雑な親子関係のせいだったのだ。
瑛貴さんはずっと真実を語っていたのに、身分差ばかり気にしていた私は、彼の本当の姿を見ようとしなかった。
「父は俺の幼少時代を不憫に思っていたからこそ、強引にでも家族を与えようとして、時々見合い話を持ってきたのだと思う。でも、俺の心の中にはずっと亜椰がいて、他の相手との結婚は考えられなかった。それくらい、きみとの思い出が心の拠り所だったんだよ」
「そうだったんですね……」