エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

 亜椰たちとの再会が叶ったのは、十月半ばの日曜日。屋内型の遊具施設で胡桃を遊ばせた後、キッズカフェで食事をする約束になっている。

 当日、約束の十時より二十分も早く東京駅近くのパーキングに車を停めた俺は、新幹線の改札口でふたりを待った。

 肩から提げているトートバッグから、胡桃のために買ったクマのぬいぐるみが顔を覗かせている。どうせなら大きいものを渡したいと奮発したが、持ち運びについて深く考えていなかったので、少々人目が気になった。

 でも、たとえ周囲からどう思われようと、娘の喜ぶ顔が見られる方が大事だ。そう思い直し、改札から出てくる人々を注視する。初めて感じる緊張で、脈拍がいつもより速かった。

 数分後、手の中でスマホが震えて【もうすぐ着きます】と亜椰からメッセージが届く。

 広い駅なのですぐには来ないと思うが、大きく深呼吸をして、改札の奥に目を凝らす。

 数分で、人波の隙間から、胡桃ちゃんを抱っこして歩く亜椰を見つけた。

 ドクッと心臓が鳴り、一歩足を進める。スマホをタッチして改札を出てきた亜椰はすぐに俺の姿に気づき、胡桃ちゃんを抱いたまま小走りで近づいてきた。

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