エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
そう思いつつも、最初に感じた掘り出し物への期待を捨てきれずに店内を歩いていたその時。大きな家具の陰に隠れるようにしてちょこんと置かれた、子ども用のままごとキッチンを見つけた。
「えっ? これ……」
丸みを帯びたシンプルな形のキッチンに懐かしさを感じて、胸が高鳴る。昔見た時より木の色味が少し違うけれど、大きさも形も、戸棚に彫られたトナカイのマークも、思い出の中にあるあのキッチンと同じだ。
でも、確か一点もののはずだよね?
叔父の店で購入した誰かの手を離れ、巡り巡ってフィンランドのこの店に置かれていたということ?
にわかに信じられなくて、何度も瞬きしてしまう。
本物なら欲しいな……。使い道があるわけじゃないけれど、見て楽しむインテリアとして。
思い出の詰まったこのキッチンが部屋にあれば、ひとり暮らしの孤独にも耐えられる気がする。
ただ、気になるのはやはり値段だ。周囲をあちこち観察したけれど、このキッチンには値札が付いていない。
店主に直接聞いてみようとくるっと方向転換したその時、すぐ近くに別の男性客が立っていることに気づかず、男性の胸の辺りに顔をぶつけてしまった。
「わっ! ごめんなさい」
「いえ、こちらこ、そ……」