エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「あの……もしかして、このキッチンを買うんですか?」
「ああ。それがなにか?」
「ちょっと待ってください。私も欲しいんです、これ……」
私に買える値段かどうかはわからないけれど、簡単に他の人には譲れない。
叔父の店がなくなってしまった今、家族と初恋の思い出が両方詰まったこのキッチンを、どうしても新しい家に置きたい。
「お子さんにプレゼントするとか?」
「あ、いえ……。子どもどころか結婚もしていませんが」
「じゃ、親戚か友人の子に?」
「そういうわけでもありません……」
質問に答えるたびに男性が怪訝そうな顔になり、居たたまれない。
しかしどうしても欲しいのだと訴えたくて、口を開いた。
「このキッチンに、思い出があるんです。とても大切な」
初対面の男の子とままごとをして、結婚の約束をしたと言うのはさすがに恥ずかしいので、ざっくりとそう告げる。
それでも少し気まずくて、彼から目を逸らすようにキッチンの前にしゃがみ込んだ。丸みを帯びたキッチンの角に手を伸ばし、そっと撫でる。
「もしかして……初恋、とか?」
彼が静かに問いかけてきて、どきりとする。
なんで初恋だとわかったんだろう……。