絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
列車に乗っていただけなのに、体がバラバラに崩れてしまいそうだ。
(はぁ……己の虚弱体質が憎いわ……)
気持ちばかり先走って、思い通りに動けない自分にイライラしてしまう。肘置きにもたれながら、ぼんやりと窓の外を見つめていると、
「――どうぞ」
目の前のテーブルにカップが置かれる。ふわりと鼻先に不思議な香りが漂った。
「いただきます……」
正直、今はなにも口にしたくないと思っていたが、せっかく入れてもらったお茶を無駄にはしたくない。
カップを持ち上げて唇をつける。一口飲んで驚いた。匂いはきついと思ったが、たっぷりのスパイスとお砂糖が入ったお茶は、ビックリするほど美味だった。
「マティアス様、これ、すごくおいしいのですが……!」
「お口にあってよかった。軍隊式のスパイスティーなのであまり上品ではないんですが、疲れには効きますよ」
マティアスも長い足を組んでフランチェスカの隣に腰を下ろし、お茶を口元に運んだ。
開け放った窓から吹き込む風にそよぐ彼の赤毛が美しい。
(あぁ……部屋に風を通すためではなくて、私を休ませるためにここに寄ってくださったのね)
忙しいマティアスの時間を奪ってはいけないと、焦っていた気持ちが少しだけ緩む。
「マティアス様、ありがとうございます。私、また肩に力が入っていました。同じ過ちを繰り返すところでした。学ばない自分が恥ずかしいです」
倒れた後、根を詰め過ぎるなと言われたばかりなのに、気力でなんとかなると思い込んでしまう。もう少しやれるはずだと思ってしまう。たぶんそれは『そうありたい』というフランチェスカの願望なのだろうけれど。
(マティアス様に呆れられてしまったかも……)
がっくりと肩を落としたところで、そうっと膝の上に手が置かれる。
「フランチェスカ。そのために俺がいるんです」
「え?」
マティアスの言葉に、フランチェスカの胸がドキッと跳ねる。大きなマティアスの手のぬくもりに、じんわりと体が熱を帯び始めた。
『もしかしたら旦那様、フランチェスカ様のこと、好きになり始めておられるのでは?』
脳裏にアンナの言葉がぐるぐると回って離れない。もしかしたら、今ここで彼に思いを告げたら、妻として受け入れてくれるのではないだろうか。
(これ以上のチャンスはないのでは……!?)
(はぁ……己の虚弱体質が憎いわ……)
気持ちばかり先走って、思い通りに動けない自分にイライラしてしまう。肘置きにもたれながら、ぼんやりと窓の外を見つめていると、
「――どうぞ」
目の前のテーブルにカップが置かれる。ふわりと鼻先に不思議な香りが漂った。
「いただきます……」
正直、今はなにも口にしたくないと思っていたが、せっかく入れてもらったお茶を無駄にはしたくない。
カップを持ち上げて唇をつける。一口飲んで驚いた。匂いはきついと思ったが、たっぷりのスパイスとお砂糖が入ったお茶は、ビックリするほど美味だった。
「マティアス様、これ、すごくおいしいのですが……!」
「お口にあってよかった。軍隊式のスパイスティーなのであまり上品ではないんですが、疲れには効きますよ」
マティアスも長い足を組んでフランチェスカの隣に腰を下ろし、お茶を口元に運んだ。
開け放った窓から吹き込む風にそよぐ彼の赤毛が美しい。
(あぁ……部屋に風を通すためではなくて、私を休ませるためにここに寄ってくださったのね)
忙しいマティアスの時間を奪ってはいけないと、焦っていた気持ちが少しだけ緩む。
「マティアス様、ありがとうございます。私、また肩に力が入っていました。同じ過ちを繰り返すところでした。学ばない自分が恥ずかしいです」
倒れた後、根を詰め過ぎるなと言われたばかりなのに、気力でなんとかなると思い込んでしまう。もう少しやれるはずだと思ってしまう。たぶんそれは『そうありたい』というフランチェスカの願望なのだろうけれど。
(マティアス様に呆れられてしまったかも……)
がっくりと肩を落としたところで、そうっと膝の上に手が置かれる。
「フランチェスカ。そのために俺がいるんです」
「え?」
マティアスの言葉に、フランチェスカの胸がドキッと跳ねる。大きなマティアスの手のぬくもりに、じんわりと体が熱を帯び始めた。
『もしかしたら旦那様、フランチェスカ様のこと、好きになり始めておられるのでは?』
脳裏にアンナの言葉がぐるぐると回って離れない。もしかしたら、今ここで彼に思いを告げたら、妻として受け入れてくれるのではないだろうか。
(これ以上のチャンスはないのでは……!?)