絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「そうだったんですね」

 ジョエルは感心しつつも、少し用心するように声を抑える。

「それで……フランチェスカをこの場に呼んだのは、どうしてですか?」

 その瞬間、カールは声を抑えつつも、どこか興奮した気配をにじませながら、

「約一か月後、皇女は我が国に嫁いで来られる。フランチェスカには、皇女付きの女官として王宮に上がってもらいたいんだ」
 と、発言したのだった。

「えっ!」

(帝国の第二皇女様付きの女官……私が!?)

 フランチェスカは、衝撃の内容に体をぶるっと震わせ言葉を失った。
 この国において、王太子妃付きの女官はいわゆる下働きをするような侍女ではない。
 簡単に言ってしまえば公的な友人枠である。王太子妃の友人としての振る舞いを求められる、重大な職務だ。

 さらに王太子妃から信頼を勝ち得えてお気に入りにでもなれば、一族郎党は当たり前のように要職に取り上げられたり、新たに領地を与えられることも少なくない。それは貴族の女性として大出世間違いなしの申し出だった。

「すみません、待ってください……私は社交界デビューも済ませないまま嫁いだ人間です。とても王太子妃つきの女官など務まりません!」

 カールは、わかっているとうなずきながら足を組み替える。

「もちろん、屋敷を出ないこと山の如しの『ヴェルヴェック家の眠り姫』とまで言われていた君については、我々は百も承知だ。だが皇女殿下は御年十八歳。フランチェスカと同い年な上、大変な読書家らしい。とにかく本が好きな女性がいい、年が近く、何でも話せるような気の置けない友人が欲しいと、非公式でお達しがあった」
「だとしても本好きなら、私以外にいくらでもいるのでは……?」
「以前おばあ様が『フランチェスカより本を読んでいるレディはいない』と言っていたじゃないか」
「それは、そうですけど……あれはおばあ様のひいき目でしょう」

 フランチェスカは戸惑いながら首を振る。
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